
ISMS(ISO/IEC 27001)を運用している企業にとって、「マネジメントレビュー」は単なる年次イベントではありません。
それは、情報セキュリティの維持と継続的改善のために、経営層が責任を果たす「最重要な意思決定プロセス」の1つです。
この記事では、ISMSの要求事項に即したマネジメントレビューの目的・構成要素・進め方・実務ポイントについて、わかりやすく解説します。
目次
マネジメントレビューとは何か?ISMSにおける位置づけ
ISMSにおけるマネジメントレビューとは、経営層がISMS全体の有効性・適切性・妥当性を定期的に評価し、必要な改善や資源投入の意思決定を行うプロセスです(ISO/IEC 27001:2022 9.3)。
つまり、情報セキュリティに関する「今の姿」を確認し、「これからどう進めるか」を決める経営の場であり、情報セキュリティ担当者が一人で行う業務ではありません。
マネジメントレビューの目的:3つの視点で理解する
マネジメントレビューの目的は、以下の3つの観点から整理できます。
1. ISMSの有効性の確認
現在の運用状況やインシデントの有無、パフォーマンス指標(KPI)の達成度などを通じて、ISMSが目指す情報資産の保護に貢献しているかを評価します。
2. 内外の変化への対応力の確認
サイバー攻撃の手法、法律・ガイドライン、業務環境の変化などにISMSが適切に追随しているか、最新のリスクがきちんと評価されているかを確認します。
3. 継続的改善の方針決定
目標未達成、リスク管理の不備、教育不足などが判明した場合、改善方針を明確にし、必要な体制・資源・責任者を決定します。
マネジメントレビューのインプット(入力情報)
ISMSのマネジメントレビューで確認すべき項目は、ISO/IEC 27001で定められています。主なインプットは以下のとおりです:
- 前回レビュー以降のフォローアップ状況
- 外部・内部の課題の変化(例:法令改正、DX推進、委託先のセキュリティ変化)
- リスクアセスメントの結果とリスク対応の進捗
- インシデント・是正処置の記録と傾向分析
- 監査(内部・外部)の結果と改善要望
- 目標達成度やKPIの測定値
- 利害関係者(顧客・委託先など)からのフィードバック
これらを的確に整理・報告するためには、部門横断的な情報収集と文書化の徹底が必要です。
マネジメントレビューのアウトプット(成果)
レビューを通じて決定されるべきこと(アウトプット)は、以下のように定められています:
- ISMS方針や目標の見直しの要否
- リスク対応策の見直しや追加の必要性
- 資源(人材、予算、ツールなど)の投入判断
- 是正・予防処置の方針
- 次回の活動計画・改善施策の方向性
これらは、単に議事録に記載するだけでなく、アクションとして展開・追跡されることが重要です。内部監査や次回のレビューで、そのフォロー状況も確認されます。
ISMSのマネジメントレビュー:進め方の実務ポイント
1. 経営層の積極的な関与を確保する
マネジメントレビューは、**「経営が行うべき責務」**として規定されています。報告を「聞くだけ」で終わらせず、意思決定・方向性の提示・資源の承認を必ず含める必要があります。
2. 年1回以上、タイミングと内容の整合性を
ISO規格では「定期的に」とされており、年1回以上が一般的ですが、重大インシデントや法改正があれば臨時で行うべきです。
内容も単なる「前回のおさらい」ではなく、経営判断に資する要点が報告されるよう設計します。
3. インプット情報の網羅と文書化
内部監査結果、KPIデータ、インシデントログ、教育履歴などを部門横断で収集・分析し、レビュー資料として整備する必要があります。
事前に関係者へのヒアリングやプレレビューを行い、当日混乱しないように準備するのが望ましいです。
ありがちな失敗と注意点
- 「開催しただけ」で終わってしまい、アウトプットが明確でない
- 経営層の関与が形式的で、現場任せになっている
- 文書が形式的で、実際の改善に結びついていない
- 法改正・脅威動向などの外部環境が反映されていない
こうした失敗を避けるには、チェックリストや進行台本、ファシリテーターの設置など、レビューを設計する段階から仕組みを整えることが有効です。
ISMS認証における審査視点
ISMSの認証審査においても、マネジメントレビューは必ずチェックされる重要項目です。特に見られるのは以下のポイントです:
- インプットとアウトプットが網羅されているか
- 経営層の関与や決定事項が明文化されているか
- 前回レビューのフォローアップが確実に実行されているか
審査では議事録の確認だけでなく、実際にレビューが運用されているかどうかの実態が問われます。
まとめ:マネジメントレビューは「ISMSの羅針盤」
ISMSは“運用していること”自体が目的ではありません。
変化する環境下で、情報資産を守る手段として“生きている仕組み”であることが求められます。
そのために不可欠なのが、マネジメントレビューです。
- 経営が関与し
- 現状を評価し
- 必要な改善・資源投入を判断する
──このサイクルが回ってこそ、ISMSは実効性ある仕組みとして企業を守り続けられるのです。
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