【徹底解説】プライバシーマークとISMSの違い~自社はどちらを取得するべきなのか~ | オプティマ・ソリューションズ株式会社 オプティマ・ソリューションズ株式会社
助太刀記事の背景画像 雲の装飾
の画像

助太刀記事

【徹底解説】プライバシーマークとISMSの違い~自社はどちらを取得するべきなのか~

プライバシーザムライのアバター
プライバシーザムライ

プライバシーザムライ 中 康二です(オプティマ・ソリューションズ株式会社 代表取締役)。ソニー出身。プライバシーマークとISMSの専門家。個人情報保護/情報セキュリティに関して、最新の情報を皆様にわかりやすく発信しています。

皆さんこんにちは。プライバシーザムライです。

今回は「プライバシーマーク」と「ISMS」にフォーカスを当て、その違いを解説したいと思います。具体例を交えながら、私の体験・経験・所感も織り交ぜて、二つの制度の違いと重要性を深掘りして解説していきます。

(1)プライバシーマーク(Pマーク)とは?

(当社が取得しているプライバシーマークです)

プライバシーマークは、組織内で個人情報保護の取り組みが適切に行われていることを示す認証マークです。日本産業規格であるJIS Q 15001(個人情報保護マネジメントシステム要求事項)に基づいて、審査機関による審査が実施されて、日本の企業や組織に付与されます。省略して「Pマーク」と呼ばれる場合もあります。

具体的には、リクルート、NTT、日立製作所、パナソニック、JTB、広告代理店、人材派遣など、大手企業から、小規模なベンチャー企業や士業事務所、一般財団法人、NPO法人まで、幅広い業種業態の組織がプライバシーマークを取得しています。2024年現在、国内での取得数は17,000社を超えています。

私は多くの企業がプライバシーマークを取得するお手伝いをしてきましたし、プライバシーマークを取得されている企業の方とお話しすることも多いですが、プライバシーマークを取得している企業は、顧客の信頼を大切にし、多く保有している個人情報に万が一のことがあってはならないと真剣に取り組んでいる印象を受けます。

(2) ISMS(ISO27001)とは?

(当社が取得しているISMS認証マークです)

一方、ISMSは、「Information Security Management System(情報セキュリティ・マネジメントシステム)」の略で、組織内で情報セキュリティの取り組みが適切に行われていることを示す認証マークです。ISMSは、国際標準規格であるISO/IEC 27001に基づいて、プライバシーマークと同様に審査機関による審査が実施されて、企業や組織に付与されます。規格名称から「ISO27001」と呼ばれる場合もあります。同じ制度ですから誤解しないようにしてください。

具体的には、NTTデータ、富士通、GMOインターネットなどのIT企業を中心に、結婚紹介業や引っ越し屋さんなどのサービス業も幅広くISMSを取得しています。プライバシーマークは全部署(法人全体)での取得が原則になるのに対して、ISMSは部署を限定して取得することができるため、各企業が必要な部署だけに限定して取得するケースが多くみられます。2024年現在、国内での取得数は7,000組織を超えています。

もちろん私は、多くの企業がISMSを取得するお手伝いもしてきましたし、ISMSを取得されている企業の方とお話しすることも多くあります。ISMSを取得している企業は、個人情報に限らず情報全般の取扱いをしっかり管理することで、不正アクセスや情報漏えいなどを起こさない体制作りに取り組んでいるという印象を受けます。

(3)プライバシーマークとISMSの成り立ちの違い

プライバシーマーク(Pマーク)とISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)は、どちらも情報保護を目的とした制度ですが、その背景や思想、目的には明確な違いがあります。

まず、Pマーク制度は「個人のプライバシー権を守る」という考え方を基盤にしています。ここでいうプライバシー権とは、自分に関する情報を、自らの意思で管理・コントロールできる権利のことを指します。

現代社会では、個人情報を完全に秘匿することは現実的ではなく、むしろ一定の情報を提供することで利便性の高いサービスを受ける場面が多くなっています。そうした中で、情報の主体である本人が、何の情報を、誰に、どのように提供するかを決定できることが重要視されており、Pマーク制度では、その考えを実現するために、企業が個人情報の収集・利用・廃棄のプロセスを明確にし、本人の同意のもとで運用する仕組みが求められています。

一方、ISMSは組織が保有する情報資産全体を対象に、リスクを洗い出し、評価し、適切な対策を講じることで、組織の情報を守ることを目的としています。情報漏洩だけでなく、改ざんやシステム停止なども含めて、事業継続に対する脅威を包括的に管理するという考え方が基本です。極端にいえば、ISMSは自社の保護を主眼とした制度であり、顧客情報の保護もその一部として位置づけられます。

両者はアプローチこそ異なるものの、結果的にはいずれも個人情報の保護につながるという共通点があります。ただし、ISMSは「個人情報を守るため」の制度ではなく、情報の機密性・完全性・可用性を総合的に管理する枠組みであるため、必ずしも個人情報保護だけを目的としているわけではないという点には注意が必要です。

(4)プライバシーマークとISMSの要求の違い

プライバシーマーク(Pマーク)とISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)は、いずれも情報セキュリティや個人情報保護を目的とした制度ですが、それぞれの要件や運用の考え方には明確な違いがあります。

Pマークは、個人情報の保護に特化した制度であり、その運用にはJIS Q 15001に基づく厳格な規格が適用されます。認証を取得した企業は、この規格に沿って個人情報の取り扱いルールを整備・実行することが求められ、統一された管理基準のもとでの運用が前提となります。
このため、柔軟な運用には限界があり、規格から外れる対応は基本的に認められていません。

一方、ISMSは、組織が保有するあらゆる情報資産に対して、リスクを分析し、適切な管理策を講じることを目的とするフレームワークです。特徴的なのは、企業ごとのリスク状況やビジネスニーズに応じて、柔軟に対応できる点です。具体的な管理手順や文書の構成も、企業が自由に設計・運用することが可能で、形式に対する縛りは比較的緩やかです。

要するに、**Pマークは「個人情報保護の厳格なルールに準拠した統一的な運用」**を求めるのに対し、ISMSは「情報リスクに対する柔軟かつ主体的な対応」を重視する制度であり、それぞれ運用における自由度や焦点の置き方に違いがあります。

(5)どちらを取得するべきなのか

制度の趣旨から考えると、法律に基づいた個人情報の取扱いを実践したい場合にはプライバシーマーク、情報セキュリティの水準をアップしたい場合にはISMSとなり、その両方を高めたい場合には両方を取得するということになると思います。

ただし、認証取得で得られるものとコストのバランスを見ると、もう少し考えるべき点があります。

まず、顧客や取引先の認識として、プライバシーマークでもISMSでも「当社はしっかり対策しています」と対外的にアピールする上で、それほどの違いがない場合もあります。ここは顧客や取引先がどの程度詳しいかによって異なってくると思われます。「プライバシーマークは知っているけど、ISMSは知りません」というような場合もあるかもしれませんし、「プライバシーマークは国内規格、ISMSは国際規格だからISMSの方が上なんですよね」というような評価を受ける場合もあります。まずそのあたりの評価を知ることが重要です。

次に、上記(2)でも書いたとおり、ISMSは部署限定で取得できるという大きなメリットがあります。新規事業の部署だけで取得するとか、入札を担当する公共の部署だけで取得するというように、必要な範囲だけに絞ってISMSを取得することで、審査料金も社内工数も節約できる可能性があります。

最後は取得までに必要な期間です。プライバシーマークの審査を受けるには最低でも3か月、長いと6か月くらいかかる場合もあります。また医療・介護情報を多く保有している場合にはMEDIS-DC(医療情報システム開発センター)から審査を受けることになりますが、ここの審査を受けるには9か月くらいかかる場合もあります。その点、ISMSの審査は長くても3か月以内ですから、取得までの期間を短くすることが可能です。

(6)最後に


プライバシーマークとISMSは、どちらも企業が情報を適切に管理するための重要な認証です。プライバシーマークは個人情報の保護にフォーカスし、ISMSは情報セキュリティ全般をカバーします。これらを適切に活用し、顧客の信頼を築くことが、企業の成長と持続性にとって必要不可欠です。

私の経験上、プライバシーマーク/ISMSを取得している企業は、どちらであっても競合他社に対して優位に立つことが多いです。どのような規模の企業でも、情報保護に対する取り組みは重要です。今後もこの分野は進化し続けるでしょうから、私たちは常に学び続ける必要があると感じています。

当社(オプティマ・ソリューションズ株式会社)では、皆様がプライバシーマークやISMSについて最適な選択をし、社内体制を構築し、スムーズにマークを取得できるようにお手伝いをしております。興味を持っていただいた方は、下記の「メールで問い合わせる」ボタンから当社までお問い合わせください。

皆様のビジネスがさらに飛躍することを心から願っています。