医療分野に特化して市場調査を提供しているJust Worldwide株式会社。同社は調査時の信用力向上と適切な個人情報の管理のため、2022年12月にプライバシーマーク(以下、Pマーク)を取得しました。今回、そのPマーク取得の背景と効果などについて、アソシエイトディレクター プロクター 志津子氏、フィールドコーディネーター 矢野 佑希子氏、バックオフィス担当 田中 弥生氏にお話を伺いました。
御社が展開されている事業についてお聞かせください。
当社は医療分野に特化した市場調査会社です。イギリスに本社を置き、北米、南米、ヨーロッパ、アフリカ、中東、アジアなど、世界各国でさまざまな医療調査を実施しています。日本法人のJust Worldwide株式会社は2016年4月に設立されました。
製薬業界や関係団体から依頼を受け、医療品やサービスに対する医療従事者や患者様のご意見を調査し、統計として取りまとめ、製品の改良・サービスの見直しにつながる報告を行っています。当社の調査の特徴は、医師に限らず、医療現場にいらっしゃる看護師、薬剤師、理学療法士、患者様など、すべてのステークホルダーが対象という点です。
一般的に医療分野の市場調査は、対象が医師に偏りがちなところがあり、調査や統計の精度に疑念がありました。とはいえ、そもそも医療分野における市場調査の認知度が低いため、医療従事者や患者様へのアプローチは容易なことではありません。忙しく業務をされている医療従事者の方々に、その合間を縫って時間を割いてもらうのが困難です。また患者様は、個人情報を提供することへの心理的抵抗があり、また何か怪しいものを売りつけられるのではないかというような警戒感から、なかなかアポイントを取ることができません。
そうしたなか、当社は少しずつ実績を積み重ね、医療従事者や患者様との信頼関係を築いてきました。とくに患者様への調査力は業界でも随一。クライアントからも、性別・年齢・症状といった細かいセグメントに対応できる調査会社として高い信頼を得ています。これからも「患者様中心の医療=Patient centricity」という視点に基づく調査力を最大の強みに、患者様の治療や生活に良い変化をもたらすお手伝いができるように精進してまいります。
Pマーク取得の経緯をお聞かせください。
患者様との信頼関係を築く労力がいかに難しいかは、これまでの経験から身に染みていました。そうした患者様から信頼を得る方法のひとつとして、以前から公的機関の認証、Pマークを取得したいと考えていました。Pマークを取得すれば、弊社のウェブサイトやメルマガ、SNSでの投稿・配信を通じて、患者様にアピールすることができます。その際、「個人情報を大切に扱う体制が整った会社」という認識を持ってもらえれば、安心していただけると思った次第です。
しかし、日本法人設立当初は人手が少なく、業務に追われる毎日で、Pマークの取得を考える余裕はありませんでした。数年が経過し、多少の余裕は生まれましたが、Pマークのレギュレーションによって業務に支障が出るのではという懸念があり、その後も本来の業務に専念していました。社員数が増え、ようやくPマークの取得に取り組む体制が整ったのが2021年頃でした。
ISMSの取得は検討されましたか。
外資系という点ではISMSの方が良いのかもしれませんが、グローバルの本社はそれぞれの国のなかで安心してビジネスできるようにローカライズを推奨しています。そういう意味では、Pマークを取得することに支障はありませんでした。
加えて、我々の調査対象である医療従事者や患者様にとって認知されているのは、世界的に認知度が高いISMSよりも、日本独自のPマークの方でした。調査対象から信頼を得ることが目的ですから、我々に必要なのは自ずとPマークとなりました。
コンサルティング会社の利用は考えていましたか。
我々3名にもう1名を加え、計4名で事務局をつくり、Pマークの取得に取り組み始めましたが、小さな会社ということもあって一人ひとりの業務が少なくありません。手が回らないなか、素人がやる気を出して頓挫しモチベーションを落とすよりも、最初から専門家に任せた方が結果的には時間もコストも削減できると考えました。
また、田中が前職でPマークの取得に関わった経験から「ドキュメントを自分たちでつくるのはほぼ不可能、ドキュメントのテンプレートは必需品」とのこと。ドキュメントの内容についても、「合っているかどうかの判断ができない」「監査員に指摘された場合、修正が大変」ということで、最初からコンサルタントにお願いするつもりでした。
コンサルティング会社の比較・検討はされましたか。
取引先からの紹介やWeb検索などを通じ、コンサルティング会社を4社ほどピックアップして比較・検討させていただきました。当社の要件は「Pマークの中身を把握し、自分たちが主体となって運用できる」を支援してくれるコンサルティング会社です。
すべてコンサルティング会社に丸投げしてしまえば楽なのは承知していますが、審査のときに質問に答えられないのは困ります。何よりも大事なのは自分たちでドキュメントを作成して内容を把握し、その先の運用も自走できること。それが当初の目的につながっていきます。そのためのアドバイスを、手とり足取り行ってくれるコンサルティング会社を選定要件にしました。
あとは実際にコンサルティング会社とお会いさせていただき、その際のフィーリングを重視しました。フィーリングというと曖昧な気もしますが、当社は医療従事者や患者様に取材する機会が多いため、フィーリングの重要性を理解しています。もっといえば、フィーリングが合うか合わないが成功を左右するといっても過言ではありません。そして、先ほどの要件とフィーリングで選定させていただいたのがオプティマ・ソリューションズでした。 フィーリングの面でいうと、オプティマ・ソリューションズは「当社を顧客として大事に扱ってくれる」印象を受けました。最初だけでなく、信頼関係を築きながら長くお付き合いできると思ったため、オプティマ・ソリューションズにお願いした次第です。
取得のプロセスをお聞かせください。
取り組みのスタートは2022年1月、取得に向けてオプティマ・ソリューションズと動き始めたのは同年3月です。秋に審査を受け、12月には無事Pマークを取得することができました。今回の取り組みにあたり、オプティマ・ソリューションズとはオンラインで月2回の打ち合わせを実施。審査直前は3回ほど打ち合わせを行いました。
取り組みのなか大変だったところをお聞かせください。
とにかく個人情報の洗い出しが大変でした。そもそも、日本法人の設立から脇目もふらず走ってきたこともあり、情報の整理整頓に手をかける余裕がありませんでした。例えば、「あのICレコーダーはどうなっている?」「あのUSBメモリーはどこにある?」から「あれはどうなの?」「ここにもこれがある!?」と言った具合です。もちろん、データはフォルダごとに分けて管理していますが、きちんと整理されているとは言い難い状況でした。整理整頓のルールが曖昧で年々増え続ける一方でしたが、Pマーク取得の取り組みは軌道修正に丁度良いタイミングと捉え、個人情報の洗い出しに全力を尽くしました。
社員に対する教育はどのように行っていますか。
教育の研修資料は、オプティマ・ソリューションズに2パターン用意していただきました。ひとつはオプティマ・ソリューションズの標準版、もうひとつは当社向けにカスタマイズしていただいたオリジナル仕様の研修資料です。当社の業務を理解したうえでカスタマイズしていただきましたから、非常に分かりやすく大変助かっています。
昨年の研修はオンラインで行いましたが、今年はオプティマ・ソリューションズのコンサルタント、神野さんに当社まで足を運んでいただきました。私たちが行う研修と比べて、神野さんの研修は圧倒的に説得力があります。柔らかい物腰でユーモアがありながら、個人情報の重要性と運用の仕方がしっかり社員に伝わる研修を行っていただきました。
Pマーク取得後、社員の意識で変わったところはありますか。
「この情報はPマークの枠組みとしてはどうですか?」といったような社員からの問い合わせが増えました。内容によっては分からないところもありますが、そこはオプティマ・ソリューションズのサポートを得ながら解決している状況です。相談できるところがあるという点で本当に助かっています。
オプティマ・ソリューションズに対する評価をお願いします。
コンサルタントの神野さんについてお話させていただきます。神野さんは、とてもお話が上手な方という印象です。Pマークの法的な話や事務的な話は、長く聞いていると苦痛をともなうこともありますが、神野さんの話はそんなことはなく、いつも楽しい時間を過ごさせてもらっています。本当に分かりやすく、ためになるお話が多いですね。当社の担当が神野さんで良かったと実感しています。
最後に今後の展開をお聞かせください。
業務においては受け身の姿勢だけでなく、当社から発信していくビジネスモデルにトライしていきたいと考えています。実際、薬剤がなくて困っている希少疾患の患者様のお話をSNSで発信していく試みを実施しています。世のなかには難病に苦しむ方々がいらっしゃるということを発信し、それを製薬メーカーなどに知ってもらえれば、少しでも解決の糸口につながるのではないかと思っています。 当然、こうした取り組みにもPマークの存在は欠かせません。今後も数多くの医療従事者と患者様に接していくことになりますから、しっかりオプティマ・ソリューションズと連携をとりながら、運用と更新を進めていくつもりです。引き続き、よろしくお願いいたします。